数学を学ぶ理由

僕は都内の私立中高一貫校の数学教員です。

 

よく色々な人から「数学は何故学ぶのか」と聞かれることがあります。

 

うーん。

 

学ぶのは生徒であって、僕は教える人なので、「何故教えるのか」ならば答えられますが、生徒が「何故学ぶのか」は生徒ではないのでわかりません。その質問をされるといつも、学んでいる生徒に聞いたらどうかと答えています。まあ、数学が好きなんですかねー?受験のためかもしれませんね?みたいななんかそんな感じなのではないかと思います。

 

僕が数学を何故教えるのかについて書きたいと思います。

 

数学を大学・大学院で学んで一番よかったことは、「自分は『考えるとわかる』人であった」ことが確認できたことでした。高校時代どうしようもなく勉強ができなかった僕は、頭が悪いと自分のことを思っていました。

 

その後、浪人して必死に勉強して、なんとか大学進学して数学をやってみたら、ものすごく面白くて夢中で勉強しました。すると、とても難しい内容も、ものすごくよく考えると「はっ!」と視界がクリアになってわかってしまうという体験が積み重なり、自信を取り戻していきました。

 

数学を考える際に重要なのは、「前提」を明らかにして、その前提から結論が導かれることを厳密に示すことです。日常生活でも議論の「前提」は何であるかを考えるようになりました。それは、人生の中でとても大切な力だと思います。それを伝えるために数学を教えています。

 

たとえば、授業を成立させるために40名が全員着席してこちらを向いているということは前提であるか?と考えると、そんなことはないと思いますね。ということは、前提ではないのでやめていいということです。僕の授業は歩き回ったり、ネットを使ったりしながら数学をやっています。こんなふうに、発想も転換することができるようになります。

 

日々こんなことを考えています。